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ゲルマン系大陸ケルト系ドイツ系アメリカ人[1]の分布地域

ドイツ系アメリカ人英語:German American、独語:Deutschamerikaner)は、ドイツおよびオーストリアスイスリヒテンシュタインルクセンブルクフランス東端部のアルザス[2](アルザス=ロレーヌ)[3]などのドイツ語圏に定住していた者(主にドイツ人)やその国籍所持者、またはその末裔で、アメリカ合衆国の国籍を持つ集団のこと。

概要[]

ドイツ系アメリカ人の民族構成は元来のゲルマン系大陸ケルト系をはじめ、ドイツ語圏に住居しソルブ人と[4]カシューブ人[4]および、東ヨーロッパ[5]バルト系・イタリア系スペイン系・ポルトガル系・フランス系イングランド系(イギリス系)・スコットランド系[6]アイルランド系[6]および、ユダヤ系[7]やロマ(シンティ)[8]などのドイツ系人がいる。特にドイツ系アメリカ人の半数近くがアシュケナージ・ユダヤ系[9][10]であり、彼らは同胞のイスラエル[11]と密着関係にあり、他の国よりも繋がりの絆が深い[12]。そのため一概に「ドイツ系」の民族といっても、ヨーロッパ各地からドイツに定住したさまざまなグループが数多く存在し、それぞれルーツが異なるため宗教もアメリカの各州ごとに異なる。

現在のアメリカ国内によるドイツ系アメリカ人はラテン・アメリカ(中南米系)とアメリカ・インディアン黒人[13]との混血も含めた人口は4300万人ほど存在し、その人口比率は15.2%もあり[14]、アメリカではラテン系アメリカ人ヒスパニック[15]アイルランド系とアフリカ系に次いで最多である。

歴史[]

17世紀末から18世紀初にかけて、または19世紀後半から20世紀前半にかけて、約110万人以上のドイツ系の民族[16]神聖ローマ帝国の後身であるオーストリア帝国南ドイツ帝国)、およびオーストリア=ハンガリー帝国ブランデンブルク=プロイセン帝国北ドイツ帝国)の経済体制の失政が続いたために、多くの人々が職業を失い生計を立てるために移民としてアメリカに移住した。殊に『南北戦争』(1861年~1865年)前後はドイツ系の移民が多かった。

さらに『ドイツ革命』(1918年~1919年)以降から、かえってドイツ系が増加する傾向にあり、東部のペンシルベニア州などに落ち着き、19世紀後半から20世紀前半にかけてウィスコンシン州およびノースダコタ州とサウスダコタ州[17]などの中西部に多く移住し、さらに西部のシアトルやアナハイムまで移住する集団もいた。ドイツ系アメリカ人は英語および、ペンシルヴェニア・ドイツ語[18]を使用している。

また、ユダヤ系のドイツ系アメリカ人は、ニューヨークロサンゼルスサンフランシスコマイアミなどのアメリカの各州都や、多くの中心都市や地方都市に定住している。この人々はアメリカ英語を中心として、イディッシュ語(ユダヤ・ドイツ語)などを使用している。

さらに宗教はプロテスタント[19]カトリック[20]正教会[21]ユダヤ教などに多様性に分かれている[22]

『第一次世界大戦』でブランデンブルク=プロイセン帝国とオーストリア帝国[23]に対して、イギリスとフランスとロシアなどの連合軍にアメリカが参戦するとドイツ系アメリカ人は過酷な苦境に立たされた。アメリカ政府ことホワイトハウスと『アメリカ赤十字社』はユダヤ人の優遇を優先し、(特にゲルマン系・大陸ケルト系の)ドイツ系アメリカ人に対して英語を強制してドイツ系の姓の者の入社を禁止し、それを拒む者はスパイではないかと疑われたり、リンチに遭うなど徹底的な弾圧を受けた。そのために、アメリカへの忠誠を誓うために国債を大量に購入することを強いられる者もおり、ドイツ系アメリカ人が多く住む町ではドイツ語の通り名などが強制的に廃止されたり、公共の場でのドイツ語の使用が厳禁された。この状況は戦後も続いた[24]。アメリカ政府の執拗な厳命でドイツ系アメリカ人の半数余りが姓名を英語風に余儀なく変更された[25]。このことによって、ドイツ系アメリカ人の半数余りは彼らの意思と関係なく「アメリカ化」が次第に進んでしまった。そのために、自らの「ドイツ系」のルーツを否定された揚句に、母国にいる親戚と友人との関係の繋がりを断ち切らざるを得なくなったという[26][27]

1936年4月にドイツ南東部のバイエルン州出身のドイツ系アメリカ人で、フォード社の技術者だったフリッツ・クーンらが、ニュージャージー州とニューヨーク州を拠点とした右翼団体コミュニティー『ドイツ系アメリカ人協会』を結成した。この団体は親ナチス・反ユダヤ主義を貫き通し、アシュケナジム・ユダヤ人団体や『アメリカ共産党』と対決する事変を起こした[28]

また、1941年よりヒトラー[29]率いるナチス・ドイツ[30]に宣戦布告して、アメリカも参戦した『第二次世界大戦』では、ドイツとアメリカが敵同士となったため、ヒトラーの虐殺・迫害から逃れて、ドイツからアメリカに移民した半数近くのドイツ系ユダヤ人や東欧系ユダヤ人などを優遇したアメリカ政府が(ゲルマン系・大陸ケルト系の)ドイツ系アメリカ人が「敵国人である」「ドイツ風の容姿・名前である」ことから逮捕・拘束された[31]。殊に遠祖がスウェーデンのユダヤ系[32][33]だったアイゼンハワーが執拗に熱心であった。同時にアイゼンハワーは先祖を迫害した憎悪の対象である(ゲルマン系・大陸ケルト系の)ドイツ系アメリカ人の同胞である170万人のナチス・ドイツ軍と民間ドイツ人の投降に対する報復として、彼らに食料を与えず、恐怖感に怯えさせて餓死させたアイゼンハワー自身による「ホローコースト」を意欲的に実施したという[34][35]

また、アメリカの大富豪であるブッシュ家も、遠祖がドイツ西部のライン川付近を起源とするチェコ・プラハの裕福なユダヤ系の家系である[36]

さらに、ヒラリー・ローダム・クリントン(Hillary Rodham Clinton)も、オランダ系のユダヤ人という[37]

近年の状況[]

終戦以降から、アメリカで毎回国勢調査で行なわれる「先祖の出身地」の自己申告ではイングランド系[38]とドイツ系が断然の多数を占め、アフリカ系[39]・アイルランド系[40]がこれに次いだ。

1990年の『アメリカの国勢調査』による人口統計学では、当時のドイツ系アメリカ人[41]の総人口は5800万人にのぼるデーターの結果があった[42]。ただし、『ベルリンの壁崩壊』以降は、統一を果たしたドイツ政府はアメリカが生み出した「IT」を新分野として採り入れるため、ドイツ系アメリカ人のIT専門家など優れた人材を中心とする受け入れの募集を開始した。

そのため、90年代から2000年あたりにかけて、『第一次世界大戦』から『第二次世界大戦』にアメリカ政府から凄惨な過去を背負ったことがある(ゲルマン系・大陸ケルト系の)ドイツ系アメリカ人の多くが祖国ドイツ[43]を中心に、同じくIT分野を奨励した北欧諸国をはじめ、オランダベルギーカナダオーストラリアニュージーランド南アフリカなどに約1500万人前後が移住したのである[44]

21世紀現在、アメリカのドイツ系アメリカ人の人口はイングランド系アメリカ人やアイルランド系アメリカ人とともに徐々に減少した[45]。現在のドイツ系アメリカ人の人口はおよそ4300万人前後である[46]

脚注[]

  1. ユダヤ系は除く。
  2. ドイツ語ではエルザス(Elsass、Älsaß)。
  3. ドイツ語ではエルザス=ロートリンゲン。
  4. 4.0 4.1 双方とも、元来はドイツ東部にいた西スラヴ系の民族だが、現在はほとんどがドイツ化している。
  5. ハンガリー系・スロヴェニア系・チェコ系・スロヴァキア系・ポーランド系・ルーマニア系・ブルガリア系・ギリシア系・ロシア系・ウクライナ系などを含む。
  6. 6.0 6.1 島嶼ケルト系。
  7. 主に地中海付近(イタリア南部・ギリシア・スペイン・ポルトガル・フランス南部など)に定住したユダヤ教徒の「スファラディー・ユダヤ」(セファルディム)を指し、彼らは南ヨーロッパ北アフリカ中近東などを原住地とする。主にアメリカ合衆国に300万人ほど存在している(後述)。
  8. インド北西部のルーツを持つインド・アーリア系の集団。
  9. アシュケナジムとも呼ばれる。原住地は中央アジア西部のユダヤ教徒のコーカソイド(ヨーロッパ人種)の一派とされ、古代~中世からヨーロッパに西進してドイツ西部~フランス東部のライン川付近に定住した記録があったという。それ以降は迫害のために東ヨーロッパなど各地に四散した。現在の全世界のユダヤ人の総人口は2600万人ほどという。その中でヨーロッパ各国からアメリカ合衆国に移民した人数は約1900万人前後という(アメリカにはドイツ系ユダヤ人(約1000万人前後)以外に、東ヨーロッパ系の「東方ユダヤ人」が600万人ほど存在する)。同じ「ユダヤ系」として含まれる(『アメリカの国勢調査』によるアメリカのユダヤ人の人口は約800万人だが、前述の「スファラディー・ユダヤ」(セファルディム)300万人も合わせていわゆる「隠れユダヤ人」が多いので、そのようなデータとなってる)。
  10. Annual Assessment, Jewish People Policy Planning Institute (Jewish Agency for Israel), (2006), pp. p. 11, sourced from American Jewish Year Book. 106. American Jewish Committee. (2006).
  11. 約700万人のユダヤ人がおり、主にドイツ系ユダヤ人が主導権を把握している。
  12. アメリカのユダヤ人とイスラエルのユダヤ人
  13. アフリカ系アメリカ人のこと。
  14. Census 2000 Brief - Ancestry:2000の年の表(Table)2に抽出されている10万以上の出自。
  15. ラテン・アメリカ(中南米系)のこと。2013年にはその総人口は6000万(30.3%)にも増加し、アメリカ最大の民族である。
  16. 一概的にゲルマン系・大陸ケルト系に限らず、多くのユダヤ系も含まれる
  17. この3州は、総合してジャーマン・アメリカン(German American)とも呼ばれている。その違いは前者がカトリックが多く、後者はプロテスタントのルター派・カルヴィン派・ツヴィングリ派が多いのが特徴である。
  18. 広義的にはアメリカ・ドイツ語、狭義的にはペンシルヴェニア・アレマン語
  19. ルター教会・カルヴィン教会・改革派教会・メノナイト・ツヴィングリ教会など。
  20. イエズス会・ドミニコ会・フランシスコ会・シトー会・ベネディクト会・カルメル会・サレジオ会など。
  21. 東方教会およびドイツ正教会など。
  22. 一部はイスラム教徒もいるという。
  23. またはオーストリア=ハンガリー帝国とも呼ばれる。
  24. Hickey, Donald R. (Summer 1969), "The Prager Affair: A Study in Wartime Hysteria", Journal of the Illinois State Historical Society: 126–127.
  25. 例えば、Schmidt → Smith、Müller → Millerなど。
  26. Hawgood, John (1970, 1940), The Tragedy of German-America, New York: Arno Press.
  27. しかし、先祖代々、ドイツの為政者や都市国民から虐待・迫害されたユダヤ系ドイツ人の家系は例外であり、殆どが「アメリカ化」に意欲的で狂喜してこれを奨励した。
  28. 1941年に、この右翼団体コミュニティーはアメリカ政府によって解散させられ、1945年にクーンらは国外追放を命じられた。
  29. 先祖はチェコ東部のボヘミア・ドイツ系のオーストリア人(南ドイツ人)。
  30. 正確には『国粋社会主義ドイツ労働党』。
  31. German Internment Camps in World War II (thing).
  32. アメリカ合衆国陸軍士官学校(ウエストポイント)に所蔵する1915年の卒業年次別名簿に、アイゼンハワーは「スウェーデン系ユダヤ人」と記述され、中世にアイゼンホヴァー家(アイゼンハワー家)は、反ユダヤだったスウェーデン王朝のヴァーザ家に迫害され、フランスのロレーヌ(ロートリンゲン)地方と境目にあるドイツ中西部のザールブリュッケン郡カールスブルン(Karlsbrunn)に逃れてている。しかし、プファルツ選帝侯もが反ユダヤ主義だったために、アイゼンホヴァー家はさらにスイスに逃れている。
  33. notebook: Yudayasensou
  34. Eisenhower's Holocaust - His Slaughter Of 1.7 Million Germans
  35. アイゼンハワーには次のようなエピソードがある「(スウェーデン系のユダヤ人だった)アイゼンハワーはドイツ人を憎んだ。1944年9月にメアリー・ジュネーヴァ・ダウド夫人(同じくスウェーデン系ユダヤ人)に書き送った手紙で、その理由を「ドイツ人は鬼畜に等しい獣だから…」と記述していた。翌年8月には、昼食に招いた駐米英国大使に対して、「3500人ともいわれるドイツの将官は全員抹殺されるべきだ。市長以上のナチのリーダーとゲシュタポも同格である。その数は約10万にもなる…」と発言していた…」と、述べている(ジェイムス・バクー著、申橋昭訳『消えた百万人―ドイツ人捕虜収容所、死のキャンプへの道』40P、光人社刊/1993年刊行。英文原著は、1989年刊行)。
  36. ブッシュ家 を参照のこと。
  37. 『老人税 - 国は「相続」と「貯蓄」で毟り取る (Econo‐globalists7)』(副島孝彦著/詳伝社/2004年)より。
  38. 1980年のアメリカ国勢調査によれば約4900万人のイングランド系アメリカ人による申告が人口の26.34%を占めた(Data on selected ancestry groups.1980 United States Census)。現在はドイツ系と同様に減少し、3900万人(14.0%)ほどである。
  39. 4200万人(15.0%)ほど。
  40. 4000万人(14.5%)ほど。
  41. 当然、ユダヤ系ドイツ人の系統も含まれる。
  42. 『ドイツ病に学べ』(熊谷徹著/新潮社/2006年)より。
  43. オーストリア・スイス・リヒテンシュタイン・ルクセンブルクも含む。
  44. ただし、ユダヤ系ドイツ人の系統はを除く。
  45. 2007年および2008年の『アメリカの国勢調査』による人口統計学で、4527万人にのぼるヒスパニック(現在は5600万人以上に増加した)および4000万人にのぼるアフリカ系アメリカ人がドイツ系アメリカ人に代わって増加傾向にある。
  46. 前述を参照のこと。

関連項目[]

  • ゲルマン人
  • ケルト人
  • ペンシルベニア・ダッチ
  • ダリル・ホール
  • イスラエル : アメリカの経済界・政界に強い影響を持つドイツ系アメリカ人のうち半数近くのドイツ系ユダヤ人の同胞
  • ユダヤ人隠れユダヤ人も含む
  • イスラエル王国(古代イスラエル)
  • ユダヤ系アメリカ人 : アシュケナージ・ユダヤ人の系統
  • ハリー・ソロモン・トルーマン : ドイツにルーツを持つイングランドのユダヤ系アメリカ人
  • ドワイト・デーヴィッド・アイゼンハワー : ドイツ南部~スイスにルーツを持つスウェーデンのユダヤ系アメリカ人。ナチス・ドイツを憎悪した人物
  • ブッシュ家 : ライン川流域をルーツに持つチェコのボヘミア地方のアシュケナージ・ユダヤ人の系統
  • ロックフェラー家 : フランスに起源を持ち、南ドイツに移住したプロテスタントの一派バプテスト(洗礼派)のユグノー(カルヴィン派)の裕福な家系。フランス名は「岩の葉」を意味するロクフイユ(Roquefeuille)で、ドイツに移住した際にロッゲンフェルダー(Roggenfelder)と改称した。巷ではユダヤ系の説もある
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