まつもと泉

まつもと泉の自画像（笑い）

「常夏」の夢想を楽しむまつもと泉

まつもと 泉（まつもと いずみ、1958年10月13日 - 2020年10月６日）は、日本の漫画家。本名は守嶋一弥。血液型はA型。喫煙者でもある。早世したかがみあきらとともに80年代のアニメ的なものと漫画的なものの融合を確立した。

座右の銘はアメリカのアップル社の創始者のスティーヴ・ジャブズの格言である「Stay hungry. stay foolish.（ハングリーであれ。愚か者であれ！）」である。

Graffiti（まつもと泉短編集）の表紙

概要

富山県射水郡生まれ、高岡市育ちの３人姉弟の末っ子。家業は高岡公園付近にある大正時代から続く「守嶋漆器店」であった。４歳のころに交通事故に遭い、後年の持病の脳脊髄液減少症の要因となる。

姉が読んだ少女漫画と吾妻ひでお・鳥山明・江口寿史などの影響を濃く受けた。県立高岡工芸高等学校デザイン科で漫画を学んだ。

高校卒業後に英国のロックバンドのエマースン・レイク・アェンド・パゥマーに憧れて、ロックミュージシャンを目指して友人と上京するが、楽譜音痴のために挫折して漫画家になるために神奈川県川崎市にあるデザイン専門学校に通うも中退し、高校時代の友人と二人で描いた処女作の『いきなり 金星パトロール』を持参しながら、『週刊少年マガジン』をはじめとして、いくつかの出版社に投稿したが多くの編集者に評価されなかった。最終的に『週刊少年ジャンプ』（集英社）の編集者の亡き高橋俊昌と鈴木晴彦に認められ、1981年に『LIVE! とってもロックンロール』が「フレッシュジャンプ賞」で入選した。

その後、1982年に『フレッシュジャンプ』で『ミルク☆レポート』でデビューし、『ショート ショート×３』をはじめ、『アトミック 梵天先生』・『あげちゃう! マイ♡ハート』・『ぱにっくinオレンジ♡アベニュー』などを掲載した。

1983年に初連載として『すぷりんぐ♡ワンダー』を描き始めるが、掲載前に設定変更で、編集担当者の高橋によって「ボツ」になり、構想を練り直した。翌1984年春に『週刊少年ジャンプ』にて代表作の『きまぐれオレンジ☆ロード』を連載開始した。しかし、持病の脳脊髄液減少症（低髄液圧症候群）が発生し繰り返したため、たびたび休載することが多かった。彼はサービス精神が旺盛で、人を楽しませることが大好きで、社交的で人懐っこい性格で、多くの人が周りに集まる人柄だった。

結局、持病が続いたりネタが切れたため、『きまぐれオレンジ☆ロード』は1987年夏ごろに３年余で終了した。翌1988年春に、『週刊少年ジャンプ1988年スプリングスペシャル - サマースペシャル』で読切の『ハート・オブ・サタデーナイト』を経て、翌々1989年秋に『スーパージャンプ』にて『せさみ☆すとりーと』を連載開始した。しかし、相変わらず持病と闘いながら描いていたので、この作品は1992年以降は掲載しておらず、まつもと本人が逝去するまで未完のままで、以降は長期連載をする作品を発表することは永遠に不可能となった。

彼の作品は80年代当時流行だったポップ的な「ニューウェーブ」というトレンディものや少女漫画の要素を意欲的に採り入れて、アダルトでラブコメとエロでセクシーなどによる魅力な美少女キャラクターや都会的なセンスによる天性的な才能に長け、当時の『週刊少年ジャンプ』に斬新な新分野を確立した。また、彼が描く登場人物は笑いながら冷や汗をかいたり、涙を流しながら笑うという特徴を持っていた。

そのために、男性読者のみではなく女性読者も圧倒的に多かったのが、まつもとファンの特徴である。

まつもとの作品の特徴は、登場人物の勘違い・早とちり・思い込み・夢想など、パラレルワールドも含めて多様性ストーリーを作成して読者を惹きつけるなどであり、かわすみひろしなどにも、キャラの影響を与えた人でもある。しかし、『きまぐれオレンジ☆ロード』をのぞいて未完作品が多い。90年代半ばからはコンピュータグラフィックス専用のアップル・コンピューター社のマッキントッシュを使用する「CD ROM」コミック『COMIC ON』を立ち上げて、『EE』などデジタル作品を描いていた。

なお、「まつもと泉」は高校時代の友人とのユニットペンネームであった。しかし、まつもとの画風を高評価した担当の高橋からまつもとに一人で作品を描くよう説得されたため、同時に共同者である友人は連載デビューまでの年間のギャラが数万円という経済状況に耐えきれず脱落し、漫画家を廃業したという。

1999年に、『Oh! スーパージャンプ』にて『幕末綿羊娘情史』を掲載する予定だったが、同年のある日、まつもとは突然、全身ジンマシンに襲われた。彼は「とにかく全身が痒く仕事にならなくなった。同時に今まで体験したことのない気分の悪さ・時に立っていたり、椅子に腰掛けていても異常な頭痛と肩痛・首痛・脊と髄痛・気分の悪さ・倦怠感が襲ってきた」と述べている。

• 抗アレルギー剤 → まったく効かない
• 還元水素水 → 症状変わらず
• シックハウス症候群？ → 引っ越して（東京都世田谷区から町田市へ）ジンマシン止まるも体調不良 → 休載

さらに、まつもとは「当時の症状をざっというと…めまい・不眠・視力の異常低下・腰痛や脊髄痛・全身筋肉の緊張…特に頭部痛・異常なほどの肩や首のコリ・アレルギー・顎関節症・しつこい便秘・うつ症状・不整脈・動悸などの症状が感じられた」と振り返っている。

引き続き、まつもとは「痛みや怠さで立っていられないし、横になって寝ると夜は不眠が待っていた。一睡も眠れない日々が何日も続いた。睡眠導入剤さえも効かなくなっていった。しかし、導入剤の量は増えていく一方。とにかく眠れないのが一番辛かった。一週間に渡って一睡もできない事が何度と続くと死ぬのではないかとまで思った。いろんな病院巡りが続いた」とも述べている。

まつもとのコメントによると、次のような病気と誤診されたようだった。

• 不定愁訴
• 自律神経失調症
• 慢性疲労症候群
• 更年期障害
• うつ病
• パニック障害
• 統合失調症
• 顎関節症
• 難治性むち打ち症

いろいろ検査を受けて、「そのような治療を進めると、かえって歯や身体、精神をさらにボロボロに悪化した…」とまつもとは述べている。そして、５年後の2004年に姉から新聞の切り抜きを見せられ、ようやく前述の持病である「脳脊髄液減少症（低髄液圧症候群）」であると判明された。

しかし、数年後にその脳脊髄液減少症（低髄液圧症候群）が本格的に再発し、入院したため断念した。現在は概ねと回復し、可憐な女性を主人公としてラブコメを盛り込む、自分の闘病のエッセイを基本として脚色された漫画を描いている最中で、近年中に発表する予定であった。

さらに本人のブログの『サイキンのまつもと』によると、前述の脳脊髄液減少症（低髄液圧症候群）の治療・養生のために2011年２月に４歳年下の同郷の妻とともに長年使用していた世田谷区の仕事場から、よりよい環境にある広い仕事場に引っ越した、とコメントしている。前述のとおり右の片耳が難聴だが、車の運転免許を所持している。

同年５月に、郷里の高岡市でかつて日本陸軍の軍人だった父が89歳で亡くなり、そのときのまつもと本人は「父は僕と同じく頑固で生真面目だったけど、いろいろいい意味で影響を与えた人でした…」とブログでコメントをしている。

しかし、今度こそは仕事の復帰に向けて意気を持っていたものも、2012年５月初旬に転倒が原因で持病の脳脊髄液減少症（低髄液圧症候群）が再び悪化し、同年７月～12月までブラッドパッチ治療を行ない、医師の指示でベッドで横になったまま絶対安静療養に専念していた。2013年になっても、引き続き安静療養中であり、そのために新作構想はほぼまとまっていたが、当時は活動の予定は制限されていた。引き続き同年４月12日より、再入院して治療中のままだったが、同年７月26日にブログのコメントで、先月の６月中旬に退院した、という朗報があり、現在は復帰に向かって奮闘中である。

さらに引き続いて、翌々2015年３月26日に、持病の脳脊髄液減少症（低髄液圧症候群）以外にも、数年前から「心房細動」という心臓の持病を持っていたことを述べた。そのために、翌４月３日～４月８日までに、心臓の不整脈を起こしてる部分に「カテーテルアプレーション手術」を実施する事になり、入院して治療に専念することになるコメントをした。

同年９月25日には、４月に執行されたカテーテルアプレーション手術が無事に成功して、現在は手術後の経過観察で、医師から飲酒と過労は控えるように忠告されて、静かに日常を過ごしていると、コメントしている。

同年10月６日に東京経済大学の特任教授および、都築学園グループ設立による漫画・アニメなどを専門分野とした「日本文明研究所」研究員として就任することがコメントされた。

しかし、翌2016年４月末に、東京経済大学の講義を終えて帰宅の途中で、小田急線の下北沢駅構内で、急いで乗車しようとした男に、突然激しく頭をぶつけられて、持病の脳脊髄液減少症を再発してしまった。それ以来、まつもとは３ヶ月間ほど、寝たきりのままで自宅療養していた。

そのために、まつもとはパソコンを触ると持病が悪化してしまうために、メールなどをできるだけ閲覧しないでいた（液晶画面のブルーライトが、支障にきたすため）。そして、同年８月29日から、即刻に入院治療が決まり、幾度目かの闘病生活を始めることになる始末であった。

2019年11月に久々にブログを更新し、先月に尊敬する吾妻ひでおの訃報を悼むメッセージをはじめ、数年前から両足が麻痺する「脊柱管狭窄症（せきちゅうかんきょうさくしょう）」を併発するなど、日常生活にも支障をきたす状態となり、漫画を描けるどころではないとコメントしている。

しかし、まつもと本人が告白してなかった心臓の手術を数年前に受けた後に、精神症状が不安定な不定愁訴に苦しみながらも、復帰に向けて闘病を続けていたが、持病の悪化のために、2020年10月６日午前０時過ぎに療養中していた都内の病院で逝去した。享年61。

前述のようにまつもとはロックミュージシャンを目指し、パートはドラムスだった。しかし、音譜音痴だったために挫折するも、個人的には洋楽を趣味として続け、まつもと自身は70～80年代の洋楽に博識で、日本では杉真理、海外ではTOTOとジェネシスの大ファンであるが、ただし最近の音楽の傾向にはまったく理解できないとのこと。しかし、2011年７月27日に大ファンだった杉真理のライブを鑑賞して感激し、同時に知人のS氏の紹介で杉と面会し、記念撮影をしてもらい、長年の念願が叶った。

ちなみに、久米田康治の『さよなら絶望先生』の大ファンでもあった。同時に漫画家の大御所である永井豪とも親交があった。

まつもと泉が1982年に描いた少女

アシスタント

• 八田一也（八田和也）
• 萩原一至
• 岡崎武士
• 鶴田洋久
• 本多将（本田将）
• 西野めぐみ ： 1963年生まれの和歌山県出身。
• 冬馬由美 ： 1968年生まれの千葉県出身。
• 鈴木和俊
• 臼井テツヤス（漢字表記は不明）
• 松下マモル（漢字表記は不明）
• 大倉シュンスケ（漢字表記は不明）

まつもと泉のアシスタントの西野めぐみ（シナリオライター）

作品リスト

• きまぐれオレンジ☆ロード（アニメ化された）
• せさみ☆すとりーと
• 新きまぐれオレンジ☆ロード（小説版、シリーズ構成・脚本：寺田憲史）
• Graffiti（まつもと泉短編集）
• BLACK MOON（作画のみ）
• カッパ・トゥ・ザ・ティーチャー（原案/監修）
• エンジェルグラフィティ 〜あなたへのプロフィール〜（キャラクターデザイン）
• EE
• 幕末綿羊娘情史（未定）
• DIGITAL SHORT CONTENTS（フルカラー短編集）
• GRAPHIC ANTHOLOGY（フルカラー画集）

まつもと泉（右のカッパネコ）と冬馬由美の自画像（左）

脚注

『せさみ☆すとりーと』の千歳さん（笑い）

まつもと泉風パロディの痴漢予防の公告

関連項目

• 板井れんたろう ： 吾妻の師匠で、笑いながら泣いたり、汗をかくキャラを生み出して、まつもともその影響を受けている
• 吾妻ひでお ： 影響を受けた漫画家
• 鳥山明 ： おそらく影響を受けた漫画家
• 江口寿史 ： 影響を受けた漫画家
• 新沢基栄 ： 『週刊少年ジャンプ』でまつもとと同年の漫画家
• 永井豪 ： まつもとと親交がある大御所漫画家
• 清水としみつ ： まつもとと親交がある漫画家
• かがみあきら ： まつもととともに80年代のアニメ的なものと漫画的なものの融合を確立した
• かわすみひろし ： 影響を与えた漫画家
• 平井和正 ： SF作家。まつもとと交流があり、『きまぐれオレンジ☆ロード』の影響を受けた
• 寺田憲史 ： 脚本家。『きまぐれオレンジ☆ロード』のアニメの脚本を手がけた
• ダリル・ホール ： まつもとが好きな洋楽のミュージシャン

関連リンク

• デヂタル・コミック『COMIC ON』 ： 本人公式サイト
• 【漫画】まつもと泉アート展でご本人にインタビューしたよ！
• 荻野宏の突撃インタビュー第四弾「まつもと泉先生」です。
• あなたの"選択"が漫画を変える！「まつもと泉先生描き下ろしスペシャルコミック」
• 『きまぐれオレンジ☆ロード』まつもと泉×『ラブひな』赤松健 対談/＜視線の先＞インタビュー
• まつもと泉の独り言（mixiコミュニティ）