平氏（へいし/たいらうじ）とは、日本の皇族[1]が臣籍降下した氏族のこと。姓（かばね）は朝臣（あそん）。｢平氏四流｣とも呼ばれる。家系は京の朝廷に仕えた公家貴族（公卿貴族）と地方に下った武家貴族（軍事貴族）などに分かれた。
主に桓武平氏・仁明平氏・文徳平氏・光孝平氏に分かれた。
桓武平氏の家紋
概要[]
とくに著名なのが、桓武天皇の第５皇子の葛原親王（かずはるしんのう）の王子の系統である。葛原親王の長男の高棟王と次男の善棟王は公家平氏の祖となり３男の高望王（高視王/高見王）は武家平氏の祖となった。
桓武平氏[]
- 葛原親王流
高望王は上総介に任じられたが、彼自身は赴任せずに京にとどまり、代わりに長男の平良望（国香王）が目代として、上総国に赴任した。良望の子の貞盛・繁盛・良正（兼任）兄弟は坂東地方（関東北西部）に土着して、武家貴族として多くの土着武士集団を統括する存在として勢力拡大をはかった。
しかし、良望の外甥（妹の子）の平将門が母方の伯父の良望を自害に追い込んで、反乱を起こすなど悶着を起こしてしまったので、貞盛は嫡長子の維叙（維敍）をはじめ異母弟の繁盛・良正とともに、母方の叔父である藤原秀郷と従弟（叔母の子）の藤原為憲と連合軍を結成して、940年に将門を滅ぼし（『平将門の乱』[2]）、相模国高座郡鎌倉郷[3]を本拠地とする相模平氏の祖となった。
さらに1028年、将門の従子で外孫でもある平忠常（坂東八氏の祖）も反乱を起こしたため、朝廷は貞盛の曾孫である平貞方（直方）を追討使として討伐を命じたがなかなか鎮圧できずに、遠縁筋の陽成源氏（河内源氏）一門の源頼信が代わって追討使となり、貞方は更迭された（『平忠常の乱』）。以降から坂東地方における平氏の勢力は、常陸国に土着した繁盛の系統である大掾氏（常陸平氏/坂東平氏）を除いて衰退し、代わって源氏が坂東地方も含む東国に根を下ろしたのである。さらに貞方の末裔は維衡（貞盛の末子）の系統である伊勢平氏（六波羅氏[4]）の当主の平正盛によって、武家平氏の棟梁の座を奪われたのである。
武家平氏の棟梁となった正盛の子の忠盛は、海賊討伐に功績を挙げて、伊勢国を拠点に置いて南宋との貿易で利益を得た。忠盛の子の清盛は父の遺産を受け継いで、武家貴族として殿上人に昇進して、平氏一門は栄華に包まれて、皇室の藩屏として、栄えたのである。
しかし、平氏の恩顧で保っていた後白河法皇はかえって平氏の勢力を不快感を示し、1180年に平氏によって圧迫された源氏が勢いを盛り返して、伊豆国にいた源頼朝や信濃国にいた木曾義仲（頼朝の従弟）をはじめ下野国の源姓足利氏（下野源氏）や常陸国の源姓佐竹氏（常陸源氏）や、その一族である甲斐国の武田氏（甲斐源氏）などが次々と挙兵した（上野国の新田氏（上野源氏）は不参戦）。
翌年に清盛は65歳で逝去して、以降からの平氏の勢力は衰退し1183年の『屋島の戦い』を経て、1185年の『壇ノ浦の戦い』でついに滅亡してしまい、辛うじて生き残った伊勢平氏の棟梁の宗盛（清盛の３男）ら一族は、義経の命を受けた橘公長[5]によって、近江国篠原宿で処刑されて、晒し首となった[6]。
以降の平氏は伊勢平氏の嫡流を除いて、伊勢国の伊勢氏[7]と伊勢関氏[8]・小松氏[9]・池氏をはじめ、前述の大掾氏（常陸平氏）も伊勢平氏とともに滅亡した越後国の越後城氏を除いて、越後奥山氏・梁田氏（簗田氏）・常陸東條氏（常陸東条氏）・常陸太田氏・常陸小栗氏や、肥前国の肥前伊佐氏（鎮西平氏）などの庶家は、在続された。同時に、京の公家平氏は西洞院家・安居院家・烏丸家に分かれ、さらに江戸時代には西洞院家・平松家・長谷家・交野家・石井家などの５家を出した。さらに地下家である生島家もこの系統に属する。
- 万多親王流
桓武天皇の第９皇子の万多親王の系統。貞観４年（862年）に正躬王の子の住世王以下12名が平姓を賜姓されて臣籍に下り、その後は正行王の子３名、雄風王の子２名も平姓を賜姓された。
- 賀陽親王流
桓武天皇の第10皇子の賀陽親王の系統。元慶２年（878年）に賀陽親王の六男である利基王の子の潔行王が、賜姓を受け平潔行となった。
- 仲野親王流
桓武天皇の第12皇子の仲野親王の系統。仲野親王の子の茂世王・利世王・惟世王などが平朝臣姓を賜姓されて臣籍に下った氏族。
仁明平氏[]
仁明天皇の孫である雅望王・行忠王及び惟時王の系統。「仁明天皇の皇子・本康親王の末裔が「平朝臣」を賜姓されて臣籍に下ることによって成立した氏族」を仁明平氏と定義している文献もあるが、本康親王の皇子でも源兼似・源兼仁・源朝鑑・源朝憲・源保望・源由道のように源朝臣を賜姓されて仁明源氏となった者もいるため、正確には雅望王・行忠王・惟時王の後裔が仁明平氏である。
文徳平氏[]
文徳天皇の皇子・維彦親王の系統。
光孝平氏[]
光孝天皇の孫である式膽王・興我王及び忠望王の系統。「光孝天皇の皇子・是忠親王の末裔が「平朝臣」を賜姓されて臣籍に下ることによって成立した氏族」を光孝平氏と定義している文献もあるが、是忠親王の子孫でも源清平・源宗于（以上が是忠親王の子）・源康行（英我王の子で康尚の父。英我王は是忠親王の子）のように源朝臣を賜姓されて光孝源氏となった者もいるため、正確には式膽王・興我王・忠望王の系統が光孝平氏である。また、平高棟の孫・平仲興は是忠親王の子・忠望王の養子になったため、血筋からみると高棟王流桓武平氏であるが、家系的には仲興の末裔は光孝平氏である。従って平元規（仲興の子）も光孝平氏である。