松平信光（次郎三郎）像（萬松寺所蔵）
松平 信光（まつだいら のぶみつ、生没年不詳[1]）は、室町時代後期の武将。「世良田信光」とも呼ばれる。通称は次郎三郎、幼名は竹千代（竹松）、法号は光信庵（しんこうあん）、官職は和泉守/左京亮。三河松平氏（徳川氏/三河源氏）の実質的な祖。
新田氏（上野源氏）一門の義光流世良田氏の当主の世良田有親の孫、松平親氏（親季/家氏/信氏）の子[2]、信広（広親）の異母弟、妻は真浄院（遠縁筋の一色満範[3]の娘）、親直（昌龍斎）・守家（全長/全祐）[4]・親忠・與嗣（与嗣）・光重（栄金入道）[5]・光英（光央入道）・元芳[6]（忠景/正則）・光親[7]・家勝・親則[8]・信重・戸田宗光室の父。
概要[]
松平氏当主として系譜の史料で、その存在を確認できるのは信光の代からである。信光以前の系譜は確証が乏しいため、松平氏勃興の動向は未検証の状況であり、今後の検証の結果を期待するのみである。
ただ、『新田氏根本史料』（千々和実/国書刊行会/1974年）が引用する鑁阿寺所蔵の『新田足利両家系図』[9]によれば、信光は同族筋の足利氏（下野源氏）一門の鎌倉足利家（鎌倉公方）の当主である足利持氏の被官として従ったという。
さらに、信光は三河国賀茂郡松平郷[10]（現在の愛知県豊田市松平町）の土豪で、葛城姓賀茂氏流松元氏（三河賀茂氏）の当主である外祖父の松元信重[11]から、外孫として基盤を受け継いだ。
引き続き、叔父の泰親（政親/義英/益氏）の後を継いだ信光は野武士・山賊・樵・山窩[12]らを配下として勢力を拡大し三河平野に進出して、本姓の世良田氏をそのままにして、「松元から、三河国全域を平定する松平と改称する！[13]」と称し、名字を｢松元｣から｢松平｣に改めた、という[14]。
『応仁の乱』の時期に信光は室町幕府の政所執事で、かなりの遠縁筋の桓武平氏流伊勢氏の当主の伊勢貞親に仕えたと言われる。1461年（寛正元年）に、三河国の保久城の山下庄左衛門を滅ぼした。 1465年４月（寛正６年５月）に、足利氏一門の三河国守護の細川成之[15]の要請によって、信光は貞親の被官として室町幕府の第８代将軍の足利義政の命により同国額田郡一揆を鎮定した[16]。
さらに信光は、同じく足利氏流三河吉良氏（三河源氏）の系統である駿河国守護の今川氏（駿河源氏）流堀越氏一門の三河関口氏の当主の関口満興の岩略寺城を攻めて、陥落させた後に第10子の親則を城主に任じて入城させた。
同じく伊勢氏の被官で、三河東部の有力者である戸田宗光に娘を嫁がせたり、『応仁の乱』では、細川勝元[15]率いる東軍に属して、山名持豊（宗全）[17]率いる西軍方の将ある畠山加賀守（足利氏流源姓畠山氏（武蔵源氏）一門）が籠城する三河国安祥城を奇襲して、これを奪った。戦国時代に入ると三河平野の安祥に進出して、三河西部に勢力基盤を築いて、戦国大名としての松平氏の基礎を築き上げた。
晩年は出家して、光信斎と号して滝村万松寺や岩津信光明寺などを建立して、安祥城で老衰のために逝去した。戒名は崇岳院殿月堂である。
脚注[]
- ↑ 信光の生没年は諸説がある。
- 1401年（応永８年） - 1489年８月30日（長享３年７月23日） ： 享年89
- 1404年（応永11年） - 1488年８月29日（長享２年７月22日） ： 享年85（『朝野旧聞裒藁』「信光君御事蹟第一」「信光君御事蹟第二」による）
- 1413年（応永20年） - 1488年８月29日（長享２年７月22日） ： 享年76
- ↑ 『松平由緒書』より。『朝野旧聞裒藁』では、叔父の泰親の子とする。
- ↑ 足利氏一門の源姓一色氏（三河源氏）の当主。
- ↑ 守親・秀信（弥七郎）の父。竹谷松平家の祖。
- ↑ 大草松平家の祖。
- ↑ 読みはもとふさ/もとみち。
- ↑ 親友・重親の父、重玄（重忠/阿知和玄鉄）・重吉（重親の子）の祖父、玄以・忠広（重玄の子）と重利・重茂・重勝（重吉の子）の曾祖父。能見松平家の祖。
- ↑ 親益の父、親清・親宗の祖父。長沢松平家（長澤松平家）の祖。
- ↑ 『鑁阿寺系図』・『鑁安寺系図』とも呼ばれる
- ↑ 松元郷とも呼ばれる。
- ↑ 生母の於水の方（おみなのかた）の父。
- ↑ 広義の傀儡子・旅芸人・道々の者のこと。
- ↑ 「松平氏」の由来は現在の豊田市にある矢作川の上流の巴川付近にある山間の高台にある「松の木がある平地」を省略したものとする。
- ↑ 『名字でここまでわかる おもしろ祖先史』（丹羽基二/青春出版社/1990年）、頁74～77より。
- ↑ 15.0 15.1 ともに矢田義清の末裔。
- ↑ 『親元日記』
- ↑ 山名義範の末裔。
関連項目[]
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