ネット乞食(ねっとこじき)とは、インターネット上のサービスを利用して、以下のいずれかの行為を行う人の俗称。
- 他人の善意や好意で、何がしかの金品を得ようとする人
- 広告バナーやアフィリエイトなどで金銭を得ようとする個人(アフィリエイト乞食とも)
- DOMや懸賞サイトなど、兎に角インターネット上から「無料で」何か金品を得ようとする人
概要[]
ネット乞食は、インターネット普及初期(1990年代中後期)の頃と現在とでは、かなり内包する意味に変化が見られる。古くは一応の好意的な意思に従って物品を得ていた個人も存在したが、2000年代よりは「インターネットなら(少々違法なコンテンツも)無料で手に入る」と思い込んでいる者や、あるいは検索エンジンスパムをしてでも自サイトへ誘導、アフィリエイトなどで金銭が得られないかと期待する者を指してこう呼ぶ傾向も見られる。
旧ネット乞食[]
旧来の、人々に好意的に受け止められていたネット乞食では、閲覧者に気の利いたジョークを読ませたり、あるいはサイト運営者の個性を前面に出すなどして、人気を得ていた。中には切実な窮状を訴えたり、あるいは自分がどれだけ惨めで貧しいかを面白可笑しく書き立てたり、またあるいは得たものをリアルタイムで報告したりしていた。
これらは専らジョークの範疇で、変な物を贈られるほどに面白可笑しく書き立てるなどの活動も見られ、専ら「ホームページを開設、運営する」という趣味の延長であった。またこのような行為は、主に自称の形であり、「ネット乞食なので、何か下さい」とおどけて自己紹介していたほどだった。
新ネット乞食[]
昨今のネット乞食は、専らネチケットに反して掲示板スパムなどまでしてアフィリエイトやバナーの大量に張り付いたサイトに誘導したり、または「あたかも一般の広告視聴者がクリックしたように見せかけ、実際は自動プログラムなどで広告リンクへのリクエストを発信する」などの手口でクリック詐欺紛いの行為で広告視聴料をせしめたり、ファイル共有ソフトなどで違法なコピーソフト(無断複製のソフトウエアや海賊版の映像・音声ソフト)を漁ったりといった者をさすようになっている。
あるいは旧ネット乞食の表面的な所を真似て、自分の預金口座番号のみを掲載、何処かのヒマな者が金銭を振り込んでこないかと期待する者すらいる。しかもそれらのサイトは「見て面白い事が書いてあるわけでは無い」と言う点で、旧ネット乞食の劣化した模倣に過ぎないといったものである。
なお近年では押し貸しという悪質な金融詐欺的な犯罪もあり、銀行口座を晒す事への警戒から旧ネット乞食が次々にサイトを閉鎖する中で、その模倣ネット乞食のサイトだけが忘れ去られたように残っている場合もある。
これらを行っている者の実態は不明だが、広告収益事業や物品販売を当て込んだ業者(SOHOを含む)や学生などのほか、ニートや引きこもりが相当数、同種の行為に勤しんでいるとする意見すら見られ、それらは実際に金品を得る事で生活の足しなり小遣いの足しになる事を期待しての活動であるとみなされている。また過去には違法な不正コピーソフトをダウンロードしてきて、これをCD-ROMに記録して更にコピー、販売して著作権法などに抵触して逮捕される事件もしばしば報じられている。
それだけに他のインターネット利用者の反発も根強く、自称(一人称)では無い二人称ないし三人称的用法で、かつ2003年以降に於いてネット乞食というと、概ねこの新ネット乞食を指す蔑称となっている。
これらの新ネット乞食は、「ただで貰える物ならコンピュータウイルスですら貰う」とも揶揄する声もある。ダウンロードオンリーメンバー(DOM)と呼ばれる者などは、見境なく違法な不正コピーに手を出し、この不正コピーに見せかけたトロイの木馬などのスパイウェアまでダウンロード、これに感染して個人情報流出を引き起こすと見る向きもあり、日本ではWinnyなどP2Pソフトウェア利用の流行に絡み、個人情報を垂れ流しにするマルウェアが蔓延、これらの個人情報流出が2005年頃より:社会問題と化している(→山田ウィルス)。
情報ネット乞食[]
これとは別に、クリック報酬型広告や成功報酬型広告(アフィリエイト)など広告を掲載したウェブサイトを設置して、一定の閲覧者や利用者を集めようとするものもこのネット乞食の範疇に含める場合がある。これは2ちゃんねるなど電子掲示板サイトの発達によるところも大きいが、巨大なインターネットコミュニティサイトはそれだけでも掲載された広告が膨大なプレビュー数になり、これによる広告掲載料も莫大なものになる。
このため単にコミュニティサイトを設置すればすぐさま利用者が増えると考えている、一部の「ネットでぼろ儲け」を目論む者も存在する。ただ、これら投稿者からの情報提供に依存する「情報サイト」を自称するサイトは、運営開始直後は閲覧者にとっては何ら情報を提供するものではなかったり、あるいは他のサイトからコピーないし盗作してきたコンテンツ(著作権の面から見ても問題である)を設置するといった行為で、やはり嫌われる傾向も見られる。
これらは情報を他所から「拾ってくる」事で自分が利益をあげようとしており、その発想が「乞食のようにさもしい」として「ネット乞食」と呼ばれているようだ。この中には出来合いのCGIゲームをただ設置したり、ウィキペディアを含む情報提供サイトの記事を複製ないし丸写しにしたりといった行為も見られる。
- ウィキペディアの記事に関しては、GFDLに従い一定の基準を満たせば二次利用に関する問題はない。→Wikipedia:著作権#複製、改変、再配布などの利用をされる方へ
これらでは、設置したは良いがまるで利用者が集まらず、その焦りからか類似サイトの大量生産を行ったり、マルチポストや検索エンジンスパムといった行為に及んだり、更には迷惑メールにまで発展させるケースなどにより、余計に利用者の不信感を煽っている事例も見られる。
特に2000年代より成功報酬型広告で高額収入を得ている人気サイト管理者の個人が各種メディアで紹介されると、これの方法論を示した書籍を参考に模倣する者も出て、電子掲示板などに広告リンクを設置したりする迷惑行為に及ぶケースもあり、掲示板利用者から「アフィリエイト乞食」などと呼ばれ忌避されている。多くのネットコミュニティ上では「広告お断り」がネチケットないし共通認識として存在し、こういった広告は排除される傾向も見られる。
- ウィキペディアも広告掲載を拒否しているが、しばしば広告的だとして除去される外部リンクや記事も後を絶たない
コミュニティサイトの運営の問題[]
コミュニティサイトでは、閲覧者が情報を書き込み、それを他の閲覧者が視聴するという相互関係が成立するが、これがウェブサイト運営者は労せずして様々な情報が掲載された巨大サイトを持つことに繋がると考える者もいる。これを核反応に準えて「臨界を超える」ともいう向きもある。
実際に設置された自由に情報交換が行えるサイトが、すぐさま口コミなどで閲覧者を集めて、膨大なプレビュー数を生むかどうかは、そのサイトの利便性以外に、運営母体の話題性や管理体制、サイト運営側の提供するコンテンツの内容など様々な要素が複雑に関係している。少なくともサイト管理者は利用者の便宜を図る上で荒らしに対応したり、事件性のある書き込みに対応する必要に迫られる。
成功報酬型広告にしても、コンテンツ内容とどうリンクさせるかで、その報酬が得られるかどうかも違ってくることだろう。実際にアフィリエイトを行っている筋では、「儲けようと思っても儲かるもんじゃなく、趣味でやってついでに小銭が稼げるだけだ」とする体験による意見すら聞かれ、実質的にアフィリエイトで左団扇というのは非常に限られたケースだという実情も見え隠れする。
過去には1ch.tvというサービスが計画されたが、パソコン通信時代から電子掲示板勃興期に一定の成功を収めた者を起用してなお、当初予定したサービス運用の「臨界点突破(放っておいても反応が続く)」に達せない事例もあり、また近年では炎上といったような望まれない形での暴走に発展する危険性も含む。これらでは問題を上手くコントロールしないと、左団扇ではなく左前になってしまう。