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山科問題(やましなもんだい)はJR各社の旅客営業取扱基準規程第151条の解釈にまつわる問題。規程では、分岐駅通過列車利用の際の区間外乗車が認められているが、分岐駅通過列車を利用した際に、その分岐駅で途中下車ができるかどうかという問題であり、151条には多数の区間が設定されているが、東海道本線と湖西線が分岐する山科駅を具体例としてあげた活発(であると同時に感情的なまたは非論理的なものも多数あった)な論議が過去(1996年頃?)、インターネットのニュースグループ fj 内の一カテゴリ fj.rec.rail.tickets であったため、「山科問題」といわれている。

概要[]

旅客営業取扱基準規程第151条では以下の通り規定されている。

次に掲げる区間の左方の駅を通過する急行列車へ同駅から分岐する線区から乗り継ぐ(急行列車から普通列車への乗継を含む)ため、同区間を乗車する旅客(定期乗車券を所持する旅客を除く)に対しては、当該区間内において途中下車をしない限り、別に旅客運賃を収受しないで、当該区間について乗車券面の区間外乗車の取扱いをすることができる。
(中略)
山科·京都間
(以下略)

これに対して、

名古屋方面-東海道線-山科-湖西線-敦賀方面
という乗車券を使用中(途中下車ができる定期券以外の乗車券であることと、この乗車券の他に定期券を所持していないことが前提)
東海道新幹線-京都-東海道線普通列車-山科駅 途中下車 山科駅から旅行再開
というケースで、乗車券の区間外となる山科→京都→山科間の乗車が認められ、なおかつ、山科駅で別途山科-京都の往復運賃を支払うことなく途中下車ができるかどうか

という問題が山科問題の具体的な一例である。

上記の例では、「山科·京都間を途中下車しないことを条件に認められた特例だから、当該区間内の駅である山科駅で途中下車する場合には別途往復運賃が必要である」という解釈と、「山科駅は使用中の乗車券で途中下車できる駅だから、往復運賃を支払うことなく当然に途中下車できる」という解釈の両論が存在する。

約款と通達[]

途中下車の扱いについては、JR各社の運送約款である「旅客営業規則」に規定されているのに対して、区間外乗車の扱いはJR各社の通達である「旅客営業取扱基準規程」(JR東海では、「旅客営業取扱細則」)に規定されており、両者の文書としての性格からこの問題の議論となる。

つまり、約款であり一般に公告されている「営業規則」で認められている「途中下車」という乗車券の効力を、JRの内部文書であり通達でしかない「取扱基準規程」で制限をかけることができるかどうかということである。

一定の特典を与える代わりに、一般に認められている乗車券の効力に制限をかけるにあたり、旅客にその特典の内容や条件を告知する必要がある。 割引きっぷ等にあっては、乗車券面や同時に発券される「ご案内」等に利用条件などが記載されており、一定の旅客への告知と考えることができるが、本件についていえば、乗車券面にそのような案内や告知がされることは一切ない。

JRの通達でしかない「旅客営業取扱基準規程」に規定することだけで、旅客に対する告知がなされたと判断できるのかという議論がある。 一般に市販されている時刻表などには案内されている制度で、旅客に周知されておりそれで充分という意見がある一方、約款と通達の性格の違いから、通達上の規定だけでは無理という意見、JRとまったく別会社の出版物でしかない「時刻表」の案内と、旅客とJRの間の運送契約は無関係で時刻表の案内で旅客に告知などしたことにならない、などの意見もある。

また、区間外乗車の規定は、途中下車という乗車券の効力をなんら制限していない、(使用中の乗車券での途中下車は可能)ただ、それとはまったく別の問題として別途運賃が必要であるに過ぎないという考え方もある。

「区間内」という言葉の解釈[]

上記旅客営業取扱基準規程第151条では、「当該区間内において途中下車をしない」

という文言で規定しており、この区間内に「山科駅」が含まれるかという解釈の問題がある。 区間の内側だけで両端駅を含まないと解釈すると京都駅までも含まれてしまうことになり、この解釈は成り立たないが、一方の端の駅である山科駅だけを除くことを意図して「区間内」という言葉を用いるかという考え方がある。

しかし、旅客営業取扱基準規程第110条でも同様に「区間内」という表現を用いているが、こちらは両端の駅を含まないという意味合いで解釈することがJRの運用にそっており、事態を複雑にしている。

規定類の解釈のスタンス[]

上記に様々な解釈を列挙してあるが、旅客の立場で考えると、別途往復運賃を支払うことなく途中下車できることの方が旅客の利益となる。このことを根拠に、山科問題では、別途往復運賃不要·途中下車可能という解釈がある。 つまり、旅客営業取扱基準規程の中に、解釈に疑義がある場合には、旅客に有利になる解釈を適用する旨の規定があること。JRの旅客営業規則(運送約款)は、JR側の都合によって作成されているものであるから、契約当時者の一方である旅客には契約にあたっての交渉力がなく、契約自由の原則に反するため、約款等の解釈にあたっては、旅客に有利に解釈する必要があるという考え方があるため、上の解釈が生まれる。

山科問題の類型[]

上記問題は、山科駅で途中下車ができるか、という問題であるが、その逆として山科駅から乗車できるかという問題がある。

山科駅利用者が、京都経由新幹線で名古屋へ向かう場合は、

  • 山科-名古屋、山科-京都 別途往復
  • 山科-京都、京都-名古屋

という乗車券を購入しなければならない。

一方、山科駅の湖西線の隣接駅である大津京から同様のルートで乗車する場合には、

  • 大津京-名古屋 

の乗車券で乗車可能となる。

この場合に、

  • 大津京-名古屋 

の乗車券を購入し、大津京-山科間の利用を放棄し山科駅から乗車することができるかという問題である。


実際の対応は[]

JRの扱いとしては、往復運賃を支払うことなく途中下車が認められているため、実際問題としての議論は終結している。


関連項目[]

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